タロットカード「吊るされた男」
ひさごです。
ご訪問ありがとうございます。
今回から、タロットカードを1枚ずつ解説というか、語っていきたいと思っています。順番通りではなく、思いついたまま、印象深いものから順にお話ししていくことになります。
そして今回は「吊るされた男」です。

「吊るされた男」の意味の変遷
「吊るされた男」のカードの意匠は、マルセイユ版とウエイト版では少し違います。組んでいる足が違うこと、男の頭の後ろにウエイト版では後光が差していること、木の形も違いますね。マルセイユ版では2本の木に横木が渡してありますが、ウエイト版ではT字型に見えます。
この違いをちょっと頭の片隅に置いておきましょう。
Il Traditore(裏切り者)という古典的な解釈
15世紀北イタリアにおける「吊るされた男」の名称は Il Traditore(裏切り者)。
足首を縛られて逆さに吊るされた男の絵柄は、公衆への見せしめ刑。これは中世ヨーロッパで実在した刑罰で、国家や共同体を裏切った者に科される屈辱刑だったそうです。
古典的には「犯罪者」が刑罰を受けて「吊るされている(受け身)」カードだったようです。
この頃のゲームで、このカードが出たら、どんなルールがあったのでしょうね?
「泥棒が捕まって刑を受ける。一回休み」とか。
しかし、古い絵柄の中には、男が袋を持って吊るされているものもあり、この裏切り者はイエスキリストを銀貨30枚で裏切ったユダを表しているとも言われます。このあたりが、ルネサンス以降の解釈の広がりの鍵になったようです。
運命に縛られた人間ールネサンス後期から17世紀の解釈
タロットがカードゲームとして複雑化したルールを持つようになり、大アルカナの絵札が抽象的な意味を持ち始めると、この男は単なる泥棒ではなく、その背景に物語を持つ人物として生まれ変わります。例えば、
- 自ら抗えない運命に置かれた人
- 社会秩序の外に落ちた存在
ですが、彼はまだ、「吊るされている(受け身)」男。
誰かに陥れられたとか、誰かのせいで逃げられないとか、「追い詰められた状況」でしょうか。
自分の意志で吊るされた男ー18〜19世紀の神秘主義の介入
フランスを中心としたオカルティズムの流行で、タロットは秘教的象徴体系として再構築されました。そして、かつての犯罪人は以下のように読み替えられます。
- 自己犠牲
- 霊的試練
- 意図的な停止
- 高次の真理のための放棄
ここで初めて、「吊られているのは自分の意志」という解釈が生まれるのです。誰かのせいではなく、自分で選んで吊るされている。
歴史的事実とかどうかは関係なく、この解釈が以後の定番になっていきます。
ライダー=ウェイト版で意味がほぼ確定ー20世紀初頭
1909年のライダー=ウェイト版で、「吊るされた男」のイメージは完全に固定されます。特徴的なのは、 表情は穏やかで、 後光が差すしていること。
T字型の木は十字架を想起させます。ここで吊るされた男は完全に殉教者・修行者になってしまいます。秘教主義の世界観の中で、彼の頭にはついに後光が描かれ、聖人となるのです。
そして、意味は次のようにほぼ定着します。
- 手放し
- 視点の転換
- 忍耐
- 霊的成熟のための停止
心理学的解釈へー20世紀後半
精神世界を学問的に追求しようとした心理学者カール・ユング の影響下で、タロットは内面の象徴として読まれるようになります。
そして「吊るされた男」は、以下のように解釈されます。
- エゴの停止
- 無意識への降下
- 自我の一時的解体
現代ではさらに進み、尊い自己犠牲とか、待てば報われる、などと道徳的に解釈される場合もあるようです。
吊るされているのは「自発」か「不本意」か がポイント
歴史的には、このカードの本質は、「吊るされているという異常事態」です。
逆さ吊りの刑というものは、非常に苦しいのです。わざと、すぐに死なせず、苦しみ抜いて死ぬまで吊るしているのです。拷問の中でも過酷な刑とされていました。
逆さに吊るされれば、頭に血がのぼるだけでなく、内臓がグッと下がってきますから、肺が圧迫されて窒息状態にもなります。本来なら、カードのような涼しい顔はしていられないのです。
「吊るされた男」の次のカードが「死神」ですから、この男は死んでいく、と考えて良いでしょう。もしかしたら、もう、死んでいるのかもしれません。
停止とか、自我の解体とか言いますが、「精神の仮死状態」とも言えるかもしれません。
自発的に吊るされているとは
さて、このような状況に自発的に自分を追い込んでいる場合、
「吊るされる」ことに自分なりに意味を見出しているということです。
殉教者であれば、信仰を貫くことです。それは世間の常識とは真逆の世界観を見ている(逆さ)ということです。
例えば、「配偶者とうまくいかない」というご相談でこのカードが出た場合、
「しばらくは、お辛いでしょうが、我慢が続きます」と読むのはいわば当たり前の話で、
もしかしたら相談者は「自発的に吊るされている」場合もあるわけです。
その場合、すでに離婚を心に決めているとか、ご本人の心が移り、他に好きな人がいるとか。
つまり、世間の常識とは違う目ですでにこの世を眺めている可能性があります。
その場合は、自分が納得できる時まで吊るされているしかありません。その時がくれば自分で行動を起こすでよう。
そのほかに洗脳されてしまっている可能性もあります。これはやばいですね。
不本意に吊るされている場合
逆位置で出た場合は、不本意に吊るされている可能性が高いかもしれません。
親子関係やDVなどでの束縛も考えられます。
動くに動けない。動きたいのに動けない。
こういう場合、思考回路は正常ですから、動くための現実的なヒントを探すべきでしょう。
身体的な問題である場合も
足の怪我、むくみなどでも「吊るされた男」は出ます。
吊るされている足に特徴があるので、足の怪我、
同時に魚座は身体では「足」を表します。(特に足首とか、足の甲、裏、つま先)
また、対応する天体は海王星、水の星ですから、体内の水分バランスについて出る場合も割とあります。魚座としても、リンパの巡りが関係ありです。
これは正逆問わずに読むか、
あるいは、ずっと足の不調があった場合は逆位置が出れば、もうしこしの辛抱、とも読めるかもしれません。
3という数字関連で読む
「吊るされた男」は12番目のカードなので、数秘術的には1+2で「3」の数字のグループに属します。
タロットで言えば、3は女帝。対立する二つのものを調停し、拡大し、増やすという意味があります。
ただし、12は偶数なので、奇数3の拡大が外向きなのに対して、内向きの拡大、内面の複層化とか、枝分かれとか、内的充実を意味します。
動きが取れない、という図像から外向きの発展は望めませんが、内面、精神的な深まり、あるいはアイデアを生み出し熟成する時と見ることもできるでしょう。
末尾「2」のグループとしては、「女教皇」、「世界」と関係があります。バランスが良いのですが、良すぎて閉じてしまっている、動きがないという状況にもなりかねません。
個人的な経験から振り返る「吊るされた男」
個人的には「吊るされた男」のカードはよく出るカードの一つです。
家庭問題で、自分の中では「もう、これしかないな」と思いつつも、諸般の事情で次のステップに踏み出せない時、バンバン出ていました。
これは、問題を自覚していない時から出始めていたのですが、もっと精度を高めて読めていたら、自分の中での問題処理のスピードが上がっていたかもしれません。
積極的に動くときのカードではないので、解決にはしばらく時間がかかりました。
そして、足の怪我をした日にも出てました。
このカードが毎日の1枚引きなどで出たら、ちょっと足元に注意したほうがいいですね。

